March 22, 2015

Cas編集長・棚橋和博さんからアルバム「Starting Over」感想をいただきました!

今秋でソロ・デビュー15周年を迎える黒田倫弘。
インディーズシーンが登竜門のバンドならいざ知らず、
今の混沌としたミュージックシーンを予見し、イチ早くプライベートレーベルを立ち上げ、
プレイヤー周りを含む独自の作品制作環境を整えたことは、明らかに先見の明があったと言える。

しかし、ここまで15年。曲を紡ぎ、コンスタントに作品をリリースできる保証はどこにもなかった。
彼のような、ビジュアルやパフォーマンスが売りという、生身の人間そのものが商品でありつつ、
しかも、他に寄り道をしない、ミュージシャンであり続ける為に、
常に今を切り取った楽曲を作り続けなければならないという命題があった。
お手本となるソロ・パフォーマーはいない。
黒田倫弘の今に魅力がなければ、聴き手はあっという間に離れていく厳しい世界だ。
さて、4月1日にリリースされる新作『Starting Over』は、
彼にとって通算12作目となるオリジナル・アルバムだ。
最大の聴きものは、タイトル曲『Starting Over』とラストに収めた、
『ピーターパンにはなれなくたって』である。
「目を閉じて耳を澄ませば 鼓動が聞こえてる それが答えなんだろう」
と再び歩きだす決意を唄うミディアムロックチューン、『Starting Over』。
『ピーターパンにはなれなくたって』は大得意のロッカパラード。
「情けなくても、恥をかいても 生きて行こう この歌が「自分の証明」」──
こう、最後に唄われると、胸が熱くなり少し涙線も緩む。
黒田倫弘はアイドル性の象徴とも言えるピーターパンに果たしてなれなかったのだろうか。
キラキラとした非現実感溢れる夢見るエンターテイメントを届けることが使命なら、
それはやはり負けを認めるしかないだろう。
しかし、彼が現実の今を生きつつ、ドタバタと死にものぐるいで曲を綴り、そして唄い踊る、
その姿が清々しくもカッコいいなら、ピーターパンも負けを認めるはずだ。
そんな黒田倫弘は来年、デビュー20周年を迎える──。

棚橋和博(cast)

※レコーディング終了直後に「Interview File CAST vol.51」掲載のインタビューをしていただきました!